スターフィッシュホテル

有須は建築会社に勤める普通のサラリーマン。設計事務所に勤務する妻ちさとと不自由ない暮らしをしている。だが、仕事への情熱は消え、心はどこか乾いた毎日。そんな彼の楽しみは、人気ミステリー作家黒田の描く幻想的な小説だった。それは刺激が強すぎるためか、毎夜悪夢にうなされていた。夢の中で、永遠に続く闇に彷徨う。森の中の小さな灯り、それに人に温もりを求め駆け寄るが誰も彼の声には返事がない。絶望的な孤独感が漂う。その夢が暗示するような事件が現実に起った。妻ちさとが突然に失踪してしまう。そして、次々と彼の前には奇妙な出来事が起るのだった。謎のウサギ男、妻の鞄の中にあった探偵事務所の名刺、会員制クラブ。そして、2年前の浮気の相手佳世子。そんな時、黒田の新作「スターフィッシュホテル」が発売された。その小説は、今まさに有須の目の前で起っている出来事が克明に書かれているのだった。これは悪夢の続きなのだろうか。この物語は、意外な結末へと彼を誘うのだった。