卒業の朝

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ウィリアム・ハンダートは、アメリカの名門校、聖ベネディクト男子校の教師を引退して、静かに余生を送っている。ある日、25年前に卒業した教え子セジウィック・ベルの招待を受けて、ロングアイランドに向かった。聖ベネディクト校の神聖な伝統行事<ジュリアス・シーザー・コンテスト>のリマッチが開催されるのだ。それは、25年前ベルが屈辱のうちに敗れたものだった。大企業のトップにおさまり、次期上院議員選への出馬も噂されるベルが、社会で成功している同級生とハンダートを招き、コンテストを再現したいと言うのだ。当時、ハンダートは校長の絶大な信頼のもとに、ギリシア、ローマ史を熱心に教える教師であった。ローマ史の中にこそ、人類の気高い理想と人間の営みの儚さがあると考え、その理想と、謙虚さによる野心の抑制を生徒たちに教えたいと思っていたのだった。しかし、ひとりの生徒の出現によって、その人生観は内側から崩れ落ちた。それは、ことあるごとにハンダートに逆らう上院議員の御曹司ベル。寛容が限界に達したハンダートが言い放った一言でベルは頭角を表し、<ジュリアス・シーザー・コンテスト>の予選を勝ち抜いて、4位につけた。ところが、そのベルは期待も虚しく敗退する。こともあろうにカンニングのあげくの敗退だった。この日を境にベルは愚行に走り、たちまち劣等生の中に埋もれていった。そして卒業。父親のコネで名門大学に進学し、大企業のトップとなったのだ。そんなベルは昔のままだった。リマッチの<ジュリアス・シーザー・コンテスト>-ハンダートは、またも無線を使ってカンニングするのだった。

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