キング・イズ・アライヴ

1995年にデンマーク映画界の4人の監督が、コペンハーゲンで<ドグマ95>というグループを立ち上げた。 その意図は『現代の中味のない映画製作の皮を剥ぎとり、物語作りの真髄に立ち返ろうとするものだ』とメンバーの一人であり、今作を演出したレヴリングは言う。メンバーの中には、ダンサー・イン・ザ・ダークのラース・フォン・トリアーらが、名を連ねている。そのドグマ作品の第4作目にあたるのがこの「キング・・・」ということになる訳だが・・・。 砂漠を横断するバスが、コースをはずれゴーストタウンに迷い込み、ガス欠になってしまう。はたして救助は来るのだろうか、不安と渇きに苛まれる11人の乗客は、次第に感情のバランスを崩していく。サバイバルをベースに置いたサスペンスドラマに、なぜかシェークスピアのリア王をからませて展開していく物語は、出演者それぞれの役柄に明確な個性を与え、人間ドラマとして一応の見ごたえを感じさせてはくれる。だが、大きな理念をもってスタートしたドグマの精神が、本当にうまく表現されているのかどうか、これは観客個々の判断を待つしかないだろう。ただ、ハンディカメラを多用した撮影手法と、カットワークの斬新さという点には、これまでに無かった何かを確かに感じさせる。大資本をバックにしたアメリカ的商業映画には無い、無垢な心構えといったものはよく出せていると思うのだが。

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