現代において最も影響力のあるアーティストにして、“伝説のロック・スター”デヴィッド・ボウイの初となる公式認定ドキュメンタリー映画『Moonage Daydream』が『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』の邦題で2023年春、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開することが決定いたしました。(配給:パルコ ユニバーサル映画)
現代において最も影響力のあるアーティストにして“伝説のロック・スター”デヴィッド・ボウイの人生と才能に焦点を当てる『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』。30年にわたり人知れずボウイが保管していたアーカイブから選りすぐった未公開映像と「スターマン」「チェンジズ」「スペイス・オディティ」「月世界の白昼夢」など40曲にわたるボウイの名曲で構成する珠玉のドキュメンタリー映画。デヴィッド・ボウイとは一体何者だったのかー。観客はボウイの音楽、クリエイティブ、精神の旅路を追体験する。本作は全編にわたりデヴィッド・ボウイのナレーションで導かれ、デヴィッド・ボウイ財団唯一の公式認定ドキュメンタリー映画となっている。
11月8日、TOHOシネマズ 日比谷に“IMAX®レーザー”が導入されることを記念して開催されている上映企画『IMAX®映画祭in日比谷』にて奇しくも皆既月食の日に本作のジャパンプレミアが行われた。
登壇したのは音楽ライターで本作の字幕監修を務めた大鷹俊一、そして同じく音楽ライターとして活躍する粉川しの。場内にはデヴィッド・ボウイのファンたちが集い、彼らの熱気が作り出す特別な高揚感に包まれた中、トークイベントが始まった。
今回は「IMAX映画祭 in 日比谷」と銘打った、TOHOシネマズ 日比谷でのIMAXレーザー導入を記念した興行の一環で行われている。観客とともに鑑賞した大鷹は「IMAXで観るのは初めてですが、この作品が真価を発揮するのはこのシチュエーションなんだなとつくづく分かった」と力説。続けて「とにかく音響が素晴らしいのと、あとブレット・モーゲン監督が力を振り絞って集めた情報量と内容が素晴らしい」と、本作に対する率直な感想を語った。対する粉川は「こんなにもドキュメンタリー的“じゃない”のかと驚いたと同時に、すごく納得がいった」と切り出す。「『デヴィッド・ボウイ・イズ』という展覧会がありましたが、それとコンセプトが似ていて、彼の人生を完結した物語として提示するのではなく、デヴィッド・ボウイ自体の音楽やビジョンの中にとりあえず招き入れる。各々に解釈させるというのが、すごくボウイ的で感動した」と話した。
本作はデヴィッド・ボウイの死後、デヴィッド・ボウイ財団が保有する膨大な映像にアクセスすることを許可されたブレット・モーゲン監督が、2年の歳月をかけて厳選したフッテージを元に構成されている。そして「財団公認」というお墨付きも得た初のドキュメンタリー作品となっているが、そもそもボウイの中にヒストリカルなものを作ろうというアイデアはあったと大鷹は解説する。しかし、いわゆるドキュメンタリー的なものにはしたくなかったそうで「そういう意味で本作はボウイの構想に限りなく近いんじゃないか」と太鼓判を押す。貴重な映像もふんだんに使用されているが、大鷹は特に注目した映像として、ジギー・スターダストの最終公演にジェフ・ベックが登場するところを挙げ、粉川はハンザ・スタジオの内部映像とデヴィッド・ボウイのアジア放浪を挙げた。
続いてトークイベントは本作の構成に関する話題に及ぶ。「時代を交錯させて、わざと眩惑させるつくりになっている」と本作の特徴を指摘する粉川が感動したのは楽曲「★(ブラックスター)」が置かれた位置だという。「コラージュ的に描かれていった作品の後半で、一つの答えとして「★(ブラックスター)」が流れる。ある意味、レクイエムのような彼の曲が、この映画では人生の締めくくりとしてうまい具合に置かれているのが、歌詞とのリンクも相まって感動した」と語った。
イベントの終盤にはMCから「デヴィッド・ボウイをどのような存在だと捉えているか」という大きな質問が飛び出す。これに対し大鷹は「この作品もテーマにしているようにチェンジズ、“変化”ですよね。それを最も分かりやすい形で、しかも完成された形で作り上げたアーティストは他にいない気がする」と回答。粉川は「今まさに大鷹さんが仰ったように変化の人なんですが、と同時に私の中では常に、ボウイだったらどうするのかと考えさせるアーティスト。変化し続けているんだけど、どこか自分の中で基準になっている、北極星みたいな人」と語った。デヴィッド・ボウイという存在について、重ねて「音楽史の中では」と問われると、大鷹は「キャラクターをあれだけ頻繁に変化させて成功させたのは、一つのモデルケースになったことは間違えない。あとライブパフォーマーとして、時代毎に最適なバンドを作り出す才能。これだけ長いロック史の中にもそうそういない」と話し、改めてデヴィッド・ボウイを評価した。対する粉川は「今も解釈され続けている」と分析。「2022年ですらボウイは、今のシーンの半歩前にいるような気にさせる。亡くなった後にも何度も再評価され、いまだに定住しない。そこが面白い」と話した。
最後に大鷹から「ここ数年のアーカイブ作品、そしてもちろんこのフィルムもそうなんですけど、僕にはどう考えてもデヴィッド・ボウイが天空からプロデュースしているとしか思えない(笑)。今日も皆既月食だそうで、そういった神がかった世界、本作でも神というテーマが出てきますけど、神がかった感じがいまだに降り注いできている。稀有なアーティストと僕らは同時代を生きているんだなと非常に面白いですね」という言葉がありイベントは締めくくられた。
2023年春、TOHOシネマズ シャンテ、渋谷シネクイントほか全国公開