草の乱

1883年(明治16年)秋。松方デフレによる生糸価格の暴落、軍備拡張の増税、さらに世界的な不況で生糸輸出の激減が追い討ちをかける。生糸を売って暮らしを立てていた秩父郡下吉田村では、人々は借金に頼る暮らしへと追い詰められた。高利の取り立てにに破産する農家が続出したのだ。生糸商家「丸井」を営む井上伝蔵は、困窮にあえぐ高岸善吉、落合寅市、坂本宗作の3人とともに、不当な高利貸しの取り締まりを役所に請願するが全く取り合ってはもらえない。そんな時、「自由党」の演説大会が開かれ、自曲民権運動が秩父でも盛り上がりをみせた。困窮、不平等の元凶は政府にあるという発言に拍手喝采、賛同する人々が次々と入党する。借金年賦返済の請願運動を始め、伝蔵もこれに賛同。山中各地で集会を開き賛同者を募り、さらに加藤織平を副総理、大宮郷の顔役で代言人の田代栄助を総理として迎え人れ「困民党」を組織した。高利貸しと裁判所の贈収賄の事実も明るみとなる中、丸井の土蔵に集った困民党幹部たちは、もはや政府を打倒するしかないと、命を懸けた武装蜂起を決意するのだった。1884年(明治17年)11月1日、秩父郡ド吉田村の椋神社。竹槍・刀・鉄砲などで武装した民衆3千余が結集。境内に上がった田代栄助が、困民党の役割を読み上げ出陣を命じる。ついに武装蜂起が開始されたのだ。